自然育児友の会会報掲載記事
 
 
NPO法人自然育児友の会2010年なつ号に、私がMusic Together®や音楽と子育てとの関わりについて書いた記事が掲載されました。





    歌う子育て、始めませんか? 喜怒哀楽の毎日を歌とともに
 
「本の好きな子に」と願うなら、親は良質の絵本を読み聴かせたり、いつでも本を手元に置いて、自ら本のある暮らしを楽しむでしょう。

「絵の好きな子に」と願うなら、親は一緒に色遊びをしたり、外に出かけて自然の色や空気、風の匂いに触れ、その子にしか描けない色を探すお手伝いをするでしょう。

では、「音楽の好きな子に」と願うなら? 近頃は、子連れコンサートが人気です。もちろん、幼い頃から名曲や名演奏を聴かせたり、生の音楽に触れるのは大切なことです。でも、それだけでは何かが足りない……。

前述の絵の例を思い出してください。いきなり子どもを美術館に連れて行く親がいるでしょうか。子どもは親の背中を見て育ちます。親が日々の暮らしの中で音楽を楽しんでこそ、子どもにも音楽の楽しさが、好きという気持ちが伝わるのです。

「そう言われても、私はピアノもヴァイオリンも弾けない」と思った人。自分の身体が一番の楽器であることを、忘れてはいませんか? 声を出せばそれがメロディーになり、膝を叩けばそれが太鼓になるのです。

「ママ、歌って」この春3歳になったばかりの息子にリクエストされるがままに、私はほぼ一日中歌って暮らしています。歌は私たち親子にとってなくてはならないものです。トイレに行くときには「トイレの歌」、遊んだおもちゃを片付けてほしいと思えば、「お片づけの歌」を歌って誘い、痛い思いをしたりしたら、すかさず歌で慰めます。そして、一日の終わりには子守歌をそっと……。

むろん、初めから歌っていたわけではありません。私は人生の四半世紀をピアノとともに歩み、ジャズやクラシックなど好きな音楽のCDをよくかけてはいましたが、赤ちゃんの息子に歌いかけたりすることはほとんどありませんでした。

そんな私に、お母さん自身が歌うことの重要性を最初に教えてくれたのが、「わらべうたのあきこさん」こと柚山明子さんでした。あきこさんと初めて出会ったのは、息子が1歳になる少し前。以来、私は努めて歌うように心がけました。するとだんだん歌うことが楽しくなってきて、「努めて心がけ」なくとも、自然と歌が口をついて出るように。

歌う日々がそれから一年ほど続いた頃、新たな運命が私を待ち受けていました。アメリカの幼児音楽教育プログラムMusic Together®との出会いです。

第一号の『ナチュラルマザリング』が届いた2008年の冬。ページをめくっていた私の手がふと、止まりました。 Music Together®講師養成ワークショップの広告でした。そのまま何かに導かれるように、翌年の春にワークショップを受講し、本部登録講師資格を取得。2009年の秋には東京・杉並区内に自らのセンターNaturally Musicを立ちあげ、現在は週に4クラスを開講しています。

Music Together®は、0〜5歳の子どもたちと、彼らの成長を見守る大人たちのための、音楽を愛する心を育むプログラムです。

音楽はそもそも世間一般に考えられているような、一部の特別に才能のある人たちのものではありません。人として生まれたからには誰もがみんな、正しい音感とリズム感を育むことのできる素質を持っています。ただ、その素質が花開くためには、適切で豊かな「生身の」音楽環境が必要です。

親が話しかけることによって、子どもは言葉を覚えていくのと同じように、音楽的能力もまた、親が歌いかけることによって発達していきます。歌の上手い下手は関係ありません。子どもにとってお父さんお母さんの声に優るものはなく、歌いかけてあげる行為そのものが大事なのです。

歌は時に、親である自分自身をも助けてくれます。 昨年の冬と今年の春、私は小さな命と二度の悲しい別れを経験しました。出会えなかった悲しさを、歌が癒してくれました。自分では「悲しみを乗り越えた」と思っていても、しばらくして何気なく口ずさんだ歌により、ふたたび涙が止めどなく溢れて……。 

音楽の原点はコミュニケーションです。自分が嬉しいとき、悲しいとき、歌を歌う。それを傍にいる人が受け止めて、一緒に歌ってくれる。音楽を通じて思いを共感すること。家族間での音楽的コミュニケーションが、どの家庭にでもごく普通に見られる世の中になってほしいと、私は心から願っています。

歌う子育て。みなさんもぜひ、今日から始めませんか?